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『THE21』(2003年5月号)国際金融市場の基幹インフラ SWIFT って何?

取材・文=野辺名 豊 のべな ゆたか/ジャーナリスト

ニュースリリース

2003年4月15日

<<60秒でわかるスリーポイント解説>>

  1. 銀行&証券業界では、一昨年のアメリカ同時多発テロ以降、危機管理対策の見直しもあって、国際金融市場の基幹インフラである「SWIFT(スイフト)」に対する注目度が高まっている

  2. たしかに「SWIFT」は、金融マンでもなければ知らない言葉だが、すでに業界のグローバル・スタンダードになっており、一般のビジネスマンもぜひ抑えておきたい知識といえそう

  3. そこで、SWIFTの歴史をひもときながら、どんなサービスを提供しているのかをやさしく解説。併せて、SWIFTのシステムを支えるソリューション・ビジネスの最前線を紹介する

一九七三年に設立され 八一年に日本でも稼動

「一昨年のアメリカ同時多発テロのときは、それはもうたいへんでしたよ。ありとあらゆる金融機関が世界貿易センタービルに入っていたわけですからね。あのときは当社も専門チームを急遽つくり、対策に走り回りましたよ」

こう話すのは、グローバルな金融システムの構築事業で定評のあるジェトロニクス(株)(本社・東京都目黒区)の武井秀之プロフェッショナルサービス事業部長。
同時多発テロは国際政治のみならず、国際金融の世界にも大きな影響を与えることになった。いまや世界の金融機関のシステムはオンラインで結ばれ、為替や決済などの業務を行なっている。日本の金融機関ももちろん、そのグローバル化の例に漏れない。つまり同時多発テロは、世界の金融オンライン網の一部が危機に陥れば、その影響を世界中の金融機関が蒙ることを改めて実証したわけだ。
もともと国際金融システムは、潜在的に犯罪者に狙われやすく、ハッカーがその典型だろう。現在、銀行をはじめとする日本の金融機関は、株安や公的資金問題に揺れているが、その陰に隠れて急務の課題となっているのが、「いかにオンライン・システムを強固なものにするか」なのだ。「強固」とは、セキュリティーがしっかりしており、かつシステム上のトラブルを起こさないという意味である。
こうしたなか、業界の内外を問わず話題になっているのが、「SWIFT(スイフト)」と呼ばれる国際金融市場の基幹インフラの存在である。SWIFTは“Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication”の略で、一九七三年にベルギーに設立された金融業界の協同組合。正式にはインフラの名称ではなく、銀行&証券業務に関する情報メッセージ・サービスを提供する国際的なネットワークの運営機関を指す。
つまり、金融機関同士が資金決済やトレーディングを行なう場合の電文メッセージのスキームやソフトウェアを開発・提供している。平たくいえば、各国の銀行や証券会社に、“世界標準”化された情報インフラを提供しているというわけだ。日本では、八一年にシステムが稼動。世界的には、すでに約二百カ国、七千社以上の金融機関が、SWIFTのスキームやソフトを利用している。

でもなぜ、SWIFTがこれほどまで利用されているのか。その理由は、やはり(1)グローバル・スタンダードであること、(2)システムの安全性・信頼性の高さに尽きるだろう。
「いまや海外の金融機関との国際決済は、増える一方ですからね。たとえば最近、日本企業も続々と中国に進出していますが、日本の親会社と中国の子会社とのあいだで資金の振り込みや部品の納入があった場合は、当然、国際決済になります。また、中国法人が現地の金融機関を使うケースはもちろん、日本にある銀行の中国支店の口座を利用しても、国際決済になりますからね」(武井氏)

このように、企業の活動がグローバル化するなかでは、世界標準のシステムを金融機関が導入するのは、当然の流れだ。
「安全性の評価も高く、SWIFTなら、取引上の事故が起こる確立は限りなくゼロに近いとされています。たとえば通常のメールだと、相手が送ったメールをみたかどうかはわかりません。でもSWIFTの場合は、相手がメールをみると、必ず確認のシグナルが送られてきます。そういう信頼性の面でも、定評のあるシステムなのです」(武井氏)

システム全体を掌握して トラブルをすぐに解決

SWIFTはこれまで、大手金融機関が名を連ねる欧州を中心に世界へと広がっていった。ところが近年は、先述した危機管理意識の高まりとグローバル化の波もあって、日本の金融機関にも、SWIFTの導入機運が高まってきた。そして、すでに導入済みの金融機関では、システムの強化に取り組んでいる最中だ。
事実、SWIFTではいま、セキュリティー面をさらに強化し、かつインターネットのIP技術を導入した新しいインフラ「SWIFTNet」の普及を促進している。二〇〇四年には、SWIFTを利用している世界中の金融機関が、この新インフラに切り替える予定である。

こうした動きを受けて、いよいよ日本でも、SWIFT関連のビジネスが盛り上がりをみせはじめた。
SWIFTのメッセージングサービスの導入は専門性がきわめて高いため、金融機関が導入する際には、SWIFTに認定されたシステム会社の協力を得ることになる。
その点ジェトロニクスは、SWIFTの日本進出当初の八〇年代から、いち早くSWIFT関連ソリューションに取り組んできた。SWIFT関連の資格としては、「認定インターフェースベンダー」(八九年)、「SASプロバイダー」(九八年)、「ビジネス・パートナー」(二〇〇二年)の三種類の認定に加えて、SWIFTNetへの移行及びインプリメンテーションを行うために新設された「サービス・パートナー」の認定を取得している。
サービス・パートナー資格の取得により、これまでのSWIFTインターフェイスの開発、SWIFT製品の販売、ソリューションを提供だけでなく、SWIFTNetへの移行サービスをSWIFTに代わって直接提供することができるようになったのだ。
「SWIFTとのパートナーシップにおいて、四つの認定をすべてもつベンダーは、世界でもジェトロニクスが初めてです。SWIFTの導入は、日本の金融業界において大きなトピックになりつつありますし、積極的な事業を展開できます。当社は金融システムに強い会社として定評がありますから、SPOC(Single Point of Contact)としてのビジネスを展開できるのが強みですね」(武井氏)

じつはSWIFTのシステムには、複数のメーカーが関わっている。たとえば、外部からの情報の入り口であるLAN/WAN接続機器にはA社製の特定機種、セキュリティー確保のためのファイヤー・ウォールにはB社製のソフトウェア、電文を世界標準に変換するSWIFTシステムそのものにはC社製のサーバー……といった具合に、SWIFTサイドからの指定があるのだ。
「SWIFTからのさまざまなメーカー指定があるため、金融機関の担当者が悩むわけです。仮にシステムにトラブルが起きたとき、個別のメーカーに問い合わせても、自社のシステムだけを確認して、それでOKということになり、他社のシステムに原因があるかどうかはわかりません。その点、四つのSWIFT認定資格を併せ持つジェトロニクスに任せればすべてやってくれるというのは、ユーザーにとって心強い限りだと思います。SPOCとは、当社がコンサルティングから、構築、導入、運用保守に至るまで、あらゆる問い合わせのそう号窓口になるという意味です」(武井氏)

いずれにせよ、国際金融市場の基幹インフラとして近年、SWIFTがますますクローズアップされているだけに、今後、SWIFT関連のビジネスも活性化することだけは、間違いないだろう。